「ここ辛くてうまいのよ」と、着物作家さんの引率で信濃町にあるタイカレー専門店「メーヤウ」へ。正午前なのに行列ができて、持ち帰り弁当を待つ人であふれていた。職場から歩いて10分足らずのところに、こういう店があったのかと期待が高まる。後ろでは学生が「注射針を打った。見てこれ。」なんて言っている。たぶん向かいの慶応の医学部に通っているのだろう。昼飯前に医術談義とは、僕には縁のない日常だ。隣には「宗千」という大叔母の茶名と同じスナックがあった。場末感たっぷりの扉にしばし見入り、喜寿を過ぎた大叔母のママ姿を想像し「ありえねー」とひとり勝手に暇をつぶしていた。そんなこんなで15分待つ。
で、大辛メーヤウカレーと牛スジ煮込みそばを注文する。カレーには鶏のドラムとジャガイモとゆで卵が入っていて、見るからに辛そうな赤色を帯びているが、ココナツの甘い香りがした。煮込みそばは淡白なスープに入ったフォーだ。
見た目からいって、舌がバカになるのはカレーの方だろうから、先にそばに手をつけた。辛味づけはお好みで、テーブルには赤・青唐辛子やナンプラーが備え付けてあった。着物作家さんは赤と青の唐辛子をどばっと入れて、透明なスープが赤らんでいる。僕も真似して入れたら辛いんでないの。一口でむせてしまった。「弱っちいなあ!」とげきをとばされ、意地になって青唐辛子も入れた。
次にカレー。鼻水が止まらない辛さを初めて体験した。涙が出そうで出ない辛さ。隣のサラリーマンも鼻をかんでいる。ティッシュはそういうことだったのか。汗をふき、鼻をかみ、水を飲みつつも食がすすむ。ハァ~ッと舌を空気に触れさせてまた食べる。その感覚がたまらない。二人とも玉の汗をかきながら平らげた。
KENJI
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