決して芸術肌の家系でないのに、それぞれが芸術を日常として受け入れられるのは、南町にあるジャズ喫茶、ヴァンガードのおかげだと思う。マスターとフミヒデは、マンボ通りにあった小料理屋「あおい」で知り合ったそうだ。以来「三流でもいいが、心は一流」を合言葉に三流会なるチームを結成して夜な夜な南町界隈を飲み歩いていたらしい。当時のフミヒデはスポーツ一辺倒、対してマスターはジャズやワインの知識は町一番。興味の対象がちぐはぐな二人がどうして意気投合したのか不明のまま35年が経つ。
知り合いに誘われ重い足取りで行ったが、これが意外と面白かった。「天台宗のお坊さんの講話とシャンソンなのかな〜、それにしても不思議な組み合わせ、観音寺も天台宗だし行ってみっぺが」程度の知識で行ったら、阿闍梨さまを中心に8人の坊さんが歌っているのだ。チューニングみたいだ。母音しか聞こえない。馬の耳に念仏とはこういうことかなんて思いながら声明を拝聴する。前説によれば、天台声明は平家琵琶など日本の音楽の源流だという。さらに煩悩を消し去ると聞いて、俄然聞く気が沸いてくる。
しかし、気づいたら幕が閉まりかけていた。はいその通り、夢の世界にいたのだ。緞帳の間から見える坊さんに俺の煩悩を消してくれ!と思った瞬間ひらめいた。そう思う心が煩悩なのだと。
KENJI
追記 坊さんがシャンソン歌ってたのではありません。第一部が声明で、第二部がシャンソンでした。
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