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ツァン

ツァン

全国で幅広く親しまれている愛称「ツァン」はもちろん気仙沼でも多用されている。熊さん八つぁんに由来するのかどうか分からないが、「ちゃん」が訛ったのは間違いないだろう。
 では、気仙沼弁でツァンはどのように使われているのか分類を試みた。次の表がその分類である。


(1)語尾に「ジ」「ズ」「チ」「ツ」が付くと「ツァン」になるが例外もある。
(2)人物にのみ適用される。丸光デパートを「マルミッツァン」とは呼ばなかった。
(3)軽やかな「ッツァン」と滑らかな「ンツァン」の2種類ある。
(4)語尾が「ジ」だと「ンツァン」に、「ズ」だと「ンツァン」「ッツァン」に、「チ・ツ」は「ッツァン」に分類される。
(5)語尾の一つ前の音も濁音になる。ただし、個体が判別できなくなりそうな場合は濁らない。
(6)ほとんどが男性名称である。
(7)女性は年を重ねると「ツァン」と呼ばれる。

以上の特徴から、次の疑問が湧いた。
菊地喜久治は「キグッツアン」か「キグンツァン」か。
小林多喜二は「タギッツアン」か「タギンツァン」か。
菊地喜久治氏の場合、親しさの度合いで決まる。距離が近ければ名前で呼ばれ、そうでなければ苗字で呼ばれるのだろう。
では、小林多喜二氏の場合はどうか。彼の作品からイメージするに、どちらにも当てはまらず「タギズ」と呼ばれたであろう。近所から「タギンツァン」なんて呼ばれて親しまれていたら、あのような重々しい作品が生まれてこなかったような気がする。

というわけで、気仙沼で新生男子の語尾に「ジ」「ズ」「チ」「ツ」と命名すれば、自動的に称号が与えられる。多少気難しかったり、寡黙であっても何となく親しみが沸くから不思議だ。

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