(1)「この餅、カデェ」
(2)「あいづ、カデェもの」
(3)「バ、なんとカデェごだ」
(4)「カデェごど言わねで、いいがらまんず、あがらいん」
ご想像の通り「かたい」ことを指す。「かたい」も漢字に直せば「固い」「堅い」「硬い」「難い」とあって意味が若干違うように、気仙沼弁の「カデェ」も使い方によって異なる。
(1)は「この餅、固いなぁ」である。いたって普通の固さ、硬さを表す。
(2)のカデェ。これも容易に想像できるだろう。「あいつは堅い」転じて「義理堅い」「まじめ」「堅実」という意味になる。
だんだん難易度が増してきた。(3)のカデェは次のような場面で使う。フキの煮物を貰い、翌日洗ったタッパーを返すと同時に佃煮を贈る。お返しされた方が「バ、カデェごだ」と言う。その意は「あらまぁ、なんて義理堅いのかしら」である。
それにしても気仙沼の家庭はタッパーだらけである。隣からとなりへタッパーが流通し、しまいにはどこの家のタッパーだったか分からなくなってしまうのだ。100円ショップが出来て、タッパーの流通量はさらに倍増した…かどうかは不明だが、大小さまざまなサイズのタッパーが戸棚に、しかも手の届きやすいところに収納してあるのだ。
(4)の「カデェごど言う」は、最後に使う動詞を修飾するフレーズと考えるとよい。まず「あがらいん」には「座敷へお上がりください」「召し上がれ」の2通りの意味があり、「カデェごど言わねで」は「難しいことおっしゃらないで」ということになる。逆に「カデェごど言って」と言う場合もある。これは「難しいことおっしゃって」だ。これらは「難解な」の場合もあるが、「遠慮しないで」の意味で使う場合が圧倒的に多い。この「カデェ」は初対面でも旧友であっても誰彼なく使う。初対面の場合は歓迎の意を込めて、旧友の場合は気にするなの意がさらに強くなって使われているのだろう。
ところで「かたい」ならば対義語の気仙沼弁もあるはずだと思い、考えてみた。
硬い カデェ⇔やっこい 軟らかい
難い カデェ⇔やさすぃ 簡単
固い カデェ⇔ゆるっこい 緩い
標準語でも何となく通じる。
しかし、堅いだけは違う。
カデェ⇔ほでねぇ になるのだ。
人も組織も「ほでねぇ」と言われたらおしまいだ。ほでねぇの解説はまた後日。