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ワッパガ

ワッパガ

(1)「雨降ってくっから、ワッパガやりすぺ」
(2)「アイヅのやっこど、ワッパガしごどだおん」

 語尾の「ガ」は鼻に抜けずに発音する。なぜ写真が走っている人かというと、ワッパガと聞くと運動会の定番BGM「クシコスポスト」を思い出すからである。

 例文(1)の場面は町内の芋煮会だ。秋になると町内で公園や河原に集まり、里芋入りの豚汁を作り、傍らではホタテやサンマを炭火で焼き、秋の味覚を堪能する。男は火を起こし、テントを設営し、女は食材を切り、味付けをする…まさに町内あげての共同作業だ。子供たちはその間、河原で飛び石投げをしたり、オニヤンマを捕まえたりとそれぞれの遊びに没頭している。ところが雨が降りそうになった途端、リーダーないしは準ずる者が「ワッパガやりすぺ」と突破口を開く。すると子供たちも加担し、みな一心不乱に作業に没頭し、食べ終えると速やかに撤収する。そして通常の3分の2の時間で芋煮会は終了するのだ。ワッパガは「急いで」「早く」「迅速に」に加えて、「順番を省かず最後まで」ということも含まれているような気がする。ワッパガの号令は、世代をこえて全員をひとつにまとめ、作業効率を高める言葉なのであろう。

 反対に(2)のワッパガは「雑な」の意が含まれる。直訳すれば「あの人のやることは雑な仕事ですからね」になるが、仕事への評価ではない。気仙沼弁のリズムで考えれば、仕事はワッパガを7音にして言いやすくするためであろう。したがって「あの人のやることは雑ですから」になる。ただし、その後に続く言葉は言わない。流れから見て「信用がない」「信頼がない」だろうが、言い切らないところが気仙沼流なのだ。

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