「アンダモハ!」
「オメモハ!」
「アンダモハ」「オメモハ」の原型は感嘆句「バ」である。アンダモハは女性、オメモハは男性が多用する。標準語で言えば「あんたはもう、まったく~」だろうが、しっくりくる語句が見つからない。「バ」は直接的な表現を避け、微妙なニュアンスを伝える感嘆句であり、熟成すると二人称をともなって「モハ」となる。この言葉が使えるまでには最低50年はかかるだろう。不惑を過ぎ、還暦を迎えるころにやっと使いこなせるようになる。
ではアンダモハを例に考えてみる。
(1)腹がよじれるほどの笑いを提供された時の「アンダモハ」
直訳すれば「あなたもおかしなこと言うわね」だが、呼吸困難に陥りそうなほどの笑いに転じると「アンダモハ~」となる。その意は「これ以上笑わせないで。でもネタがあるならまだオッケー」といったところだ。そこには許容量を超えた自分自身に不安を抱く一方で、可能性を確かめたい自分もいて、不安と期待が交錯する。
(2)思わぬ金品を提供された時の「アンダモハ」
「あなたも随分と気遣って、もう。でも受け取っておくわね~。ほんとありがとう」である。しかし、懸賞に当たって「アンダモハ」とは言わない。お返しを考える必要に迫られる相手が目前にいる場合に発するものであり、感謝と恐縮が交錯する。
(3)不倫が明るみになった時の「アンダモハ」
「あなたはいつになったら懲りるの。いい加減にして」である。呆れ、諦めが含まれ最上級の軽蔑として扱われるが、これからも顔を合わせていかなくてはならず、拒絶と受容が含まれる。
以上の例から、相反する感情を表すのが「アンダモハ」である。判断は聞き手に委ねられる。それだけに、発するには熟練を要すのだ。