エア・グスターボ!
無理してでも行って良かった。どこから説明し始めたらいいんだろう。プログラムに殴り書きしたメモを見返したら、チェロすごい、おばさんストイック、③ティンパニー、約130、粒揃い、緩急はげしい、まじりけがない、ガニマタ、左手No1、エアグスターボ。こりゃ今まとめないと忘れてしまいそうだ。
前半はヴェートーヴェンのピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲ハ長調op.56。アルゲリッチのピアノにカプソン兄弟のヴァイオリンとチェロ。チェロがあんなにも奥深くて、立体感のあるものだと初めて知った。胸から背中にかけて何かが突き抜けていく感じ。音の糸で凧になった気分になる。それにアルゲリッチのピアノの技巧といったらもう。オペラグラスで指使いを追ったら軽い車酔いを起こした。
後半はマーラーの1番。130人の大編成。半分まで数えるのが精一杯。ツアー専用バスが4台止まっていたから多分130人以上ではあると思う。この大編成でマーラーをここまで弾きこなすとは。音の粒が揃っていて、緩急はげしくて、まじりけがなくて。屈託のないまっすぐな音に感動する。とくにティンパニーの正確さ。踊り出したくなるマーラーの元はパーカッションにあると思った。この辺がラテン系だと言われるゆえんなのかもしれない。
グスターボ・ドゥダメルは魔法使いだった。飛んで跳ねて、エア・ケイならぬエア・グスターボ。かと思えば音の流れに身をゆだねて、指揮棒に紐がついた人形劇をあやつっているみたいだ。ガニマタで振る姿、獲物をしとめた原人の喜びに見えた。一番びっくりしたのは、たぶん指揮法にあるのだろうけれど、人差し指を立てた左手を高くかざして、振り下ろしたら雷が落ちたような衝撃を感じた。かめはめ波を打つ孫悟空のような、秘孔を突くケンシロウのような。あれはたぶん、音をひとつにまとめてぶつける技ではないかと思う。ドシーンときた。
KENJI
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