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2004-10-31

芸術の秋part2:ヴァンガード

 決して芸術肌の家系でないのに、それぞれが芸術を日常として受け入れられるのは、南町にあるジャズ喫茶、ヴァンガードのおかげだと思う。マスターとフミヒデは、マンボ通りにあった小料理屋「あおい」で知り合ったそうだ。以来「三流でもいいが、心は一流」を合言葉に三流会なるチームを結成して夜な夜な南町界隈を飲み歩いていたらしい。当時のフミヒデはスポーツ一辺倒、対してマスターはジャズやワインの知識は町一番。興味の対象がちぐはぐな二人がどうして意気投合したのか不明のまま35年が経つ。

 小学生のケンジとダイジはマスターの発言にいつも悩まされていた。少年野球の観戦に来たら一大事。「米屋のケンジくんや、ポカすんなよ」とか「ダイジ、おまいの米食ってんだがらな。おらいの息子さやさしい球なげでけろ〜」と応援とも野次とも言えぬメッセージがポンポン飛び出す。それを聞いた大人たちがゲラゲラ笑う。トンネルするよりもマスターが次何を言い出すのかの方が不安だった。
 町で会うと「金玉さ毛生えできたか?」とあからさまに言われ、こっぱずかしくなって走って逃げた。ヨウコには「めんこいなぁ。観音様は大切にしろよ〜」と言う。小学2年の小娘が観音様の意味を知るはずもない。時代が違えば明らかに青少年育成条例違反だ。
 しかし大人になるにつれマスターへの見方が変わった。話題が豊富で、どんな質問も必ず返ってくるのだ。音楽はもちろん、文学、絵画、食…芸術なら何でも来い。ついでにヴァンガードで主催するコンサートにペロンコさせてもらったりした。銀皿に盛られたアイスクリームが珍しくて、皿をペロペロ舐めていたガキんちょが、同じ場所でプレイヤーの息づかいを体感しているのだ。東京では考えられない日常である。しかも本田竹広やハンク・ジョーンズなど、きっての名プレイヤー達ばかりである。
 三流でも心は一流、その意味がだんだん分かってきた。
 感性が一流であれば、身なり、住まいなんぞ三流でも構わないということなのだろう。

 KENJI

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コメント

ヴァンガード、高校ん時はよく行ってましたー!
マスターとは世間話しかしなかったけど、おもしろそうですね。
帰省して、時間が空くと行っています。
今度帰ったら即行って、話し掛けてみたくなりました。

マスター(川原)、昆野さん、で切り盛りしてるけど以前は近江さんもいたね。
あのコーヒーの味はどこに出しても負けてないねェ。

ネル生地のサイフォンで淹れるブレンドコーヒーは今でも260円。苦味の中にあるほのかな酸味がたまらないですヨ。

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河原田ライブカメラ

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