人間の本質

　実は以前、ニューヨークで占ってもらったことがあるが、自発的にそう思ったのではなく、店頭にあったオブジェに惹かれて入ったら占いの館だったのだ。頼んでもいないのに小太りのおばさんが手を握る。

　「名前は？」
　「ケンジです。」
　「ケンジ、まず20ドルだしなさい。」と言われるがままに占いが始まった。すると、おばさん占い師は深呼吸をして、
　「あなたのご先祖さまが降臨してきたわ。」
　「はい…。」
　それは10年前に死んだ曾祖母かと言いたかったが「曾祖母」の単語が出てこない。仕方なく「10年前に死んだ祖母ですか」と言った。
　「そうよ。私は祖母である。」
　おお、キヨエおっぴいと10年ぶりの再会。しかも英語で喋っている。
　「あなたは94歳まで生きるわ。」
　嬉しいことを言うではないか。でも待てよ、祖母は生きている。おっぴいはあの世で英会話を習っているのだろうか。と考える暇もなく矢継ぎ早にご託宣が言い渡される。そのうち仕事の話になったら、
　「その仕事はだめよ。失敗するわ。お金もたまらないわ。もし、あなたが幸せでいたいなら、この水晶を買いなさい。はい450ドル。カードもOKよ!」
　
　一目散に逃げた。

　写真は宝くじ売場と軒先占い、銀行と百貨店の並び。期待と不安、貯蓄と散財。
　人間の本質は変わらないんだろうな。

KENJI
　

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