芸術の秋par6:池口史子展
池口史子(ちかこ)さんの展覧会へ行った。12月11日まで損保ジャパン東郷青児美術館で開かれている。昨年書いた記事が池口さんの名前で検索したらヒットするらしく、何人かから読んだと言われて恐ろしくなって、在館中の池口さんへ尋ねたらご覧になっていなかったようで安心した。今回は初期から最近までの風景画、静物画、人物画の作品が展示されている。
昨年11月末の日経文化面に池口さんのコラムが載った。かいつまむと、北米に住む親友が現地でモデルや場所を手配してくれたエピソードと感謝の気持ちが伝わる内容で、“私は絵を描き続けることで報いたい”と締めくくっていたのを覚えている。創作を通じて社会や人と関わる姿勢が伝わってきて、こういう風にきっぱりと言い切れる自身と社会の関係性はさすが大御所だと思った。実際は小柄で華奢な方だが、骨太な職人気質と繊細な感性を持ちあわせている方なのだろうと想像を膨らませていた。
サブタイトルは静かなる叫び。エレベータで向かう僕の脳内ではムンクの『叫び』と映画『スクリーム』に、『静かな湖畔』を歌う少年少女合唱団が右往左往している。作品に何度も接して知っているはずで、「静かなる」は何となく分かるけど、なぜ「叫び」なんだろうと思いながら順路を追った。風景画ではいつも通り正面、斜め、下と角度を変えて奥行きを楽しんでいたが、女性を描いた人物画は飛び出してきそうで、目を合わせたらドキッとした。何枚かの女性像を鑑賞して感じたのは、うまく言えないけれども「凛とした」「意志の強い」「きりり」「黙然」というような印象で、ああ、これが「静かなる叫び」なんだなと思った。
KENJI
静かなる叫び-池口史子展
損保ジャパン東郷青児美術館(西新宿)
12月11日まで
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