湾内のあちこちでサンマ漁船がぎ装作業していた。ぎ装といっても「偽装」ではなく「艤装」と書くらしく、変換したらちゃんと出てきた。これから最漁期を迎えるサンマ漁の準備で、集魚灯を取り替えたり、甲板を水洗いしたり、エンジンがグァングァンと稼働していた。この船は北海道船籍で「北かじなんとか」と書いてあったので、サンマ漁の前はカジキ漁もしていたのだろう。
サンマ漁は、光に集まるサンマの習性を利用した棒受網漁が主流だ。右舷を点け、サンマを集める。その反対側に網を張る。そして、ランプを消し、左舷のランプを点けて、まさに一網打尽にする。尋ねたら電球は1個750ワット、ひとつのポールに25~30個ついている。船縁中央には緑のハロゲンランプ5キロワット。そこだけが明るく、エレクトリカルパレードみたいだ。
ふ~ん、サンマ君は船底を行ったりきたりするのかと、光の下に立ってみる。まぶしいし、熱い。
コンビニのレジ前にある保温器に入れられた気分になる。
KENJI
むかし、内湾のウミネコは決して人に近寄ろうとしなかったが最近は違う。向こうから積極的にアプローチしてくるようになった。かっぱえびせんを持っていると、どこから来るのだろう、ものの1分もしないうちに20羽近く寄ってきた。でも、ここまで近づかれるといろは坂の猿みたいに襲われるのではないか不安になる。餌付けも良し悪しだなあと思いながら2時間観察してみた。
(1)足元に置いたら来なかった。人間との距離は1メートルが限界っぽい。
(2)ホバリングして手からキャッチできるのは10羽のうち1羽だけだった。それが写真のウミネコ。直径60mの円弧を時計回りに描きながら、15秒おきにキャッチする。チャレンジするが途中で諦めるのが1羽、その他は海に落ちたものを競い合って拾う。
(3)とろいのが1羽。目の前に放っても必ず奪われてしまう。癇癪を起こしたのか、くちばしで仲間の羽根を引っ張っていた。
(4)何もないと分かると約3分で退散した。逆にあると分かると仲間に知らせるように啼き出し、約1分で20羽が集まった。プラザホテル、五十鈴神社のあたりからも飛んできた。
(5)雄と雌なのか、ボスと子分なのか、群れの中でも避けるように等距離を保っている。力関係があるとみた。
ところで、エースポート前のかもめ食堂が先週閉店した。煮干しだしのしょうゆラーメン食べたさに何度通っただろう。同じ場所で3代70年。引き継いで切り盛りし続けてきたおばちゃん、どうもありがとうございました。
KENJI
舘山取水場の先は大川と松川川の合流地点で、むかし、といっても中世までこの辺が河口だったという。2月下旬の日曜日、松川から八瀬に向かって歩いていたら船団の汽笛が聞こえた。直線で5キロはあるだろうに、目の前を通り過ぎているみたいに明瞭だ。山あいなのに汽笛。鶴が浦を歩いたときもそうだった。
それはともかく、写真は平八幡神社の大サワラ。樹齢どのくらいなのだろう。大人3人が手をつないでやっと回る幹。床屋の看板みたいによじれる樹皮。深い皺。見上げると迫力がある。神社の脇をバイパスが走り、鎮守の森の3分の1が削り取られてのり面になっていた。文明と自然の境界線というか、この大サワラが防波堤になっているような気がする。
「大川を歩く」はこのへんでいったん締めます。中流、上流にもおもしろスポットがあってクレー射撃場、新月渓谷、前木不動尊と菅江真澄、室根山と熊野信仰…、想像しただけでもワクワクして、こんど帰省したら必ず歩こうと思います。
KENJI
本町橋からさらに1キロ上流へ行くと取水場がある。ここでくみ上げた水はいったん山にあげて浄水される。浄水場は市内に7ヶ所あって、ここから気仙沼、松岩、階上、大島地区に配水されているというから気仙沼最大の水がめである。もしここに林真須美がカレーをぶちまけたら大惨事だ、なんて考えながらせせらぎの音を聞く。
それにしても帰省していつも思う。水がおいしい。むかし、三陸新報の連載で、上流にある新月渓谷のなんとか岩には浄化作用があるというのを読んだ覚えがある。自然の浄化を経て浄水されるのだからひときわおいしい。蛇口の水をガブ飲みできるなんて幸せだ。家庭用浄水器をつけたり、ミネラルウォーターを飲んだりする必要もない。飲料水どころか、洗濯水も風呂水もウォシュレットもすべておいしい水だもの。
下世話だが、2リットル147円のペットボトルに換算したらいくらになるか計算してみた。1ヶ月一人あたりの水道使用量は3.61立方メートル、リットル換算で3610リットル。ペットボトルにすると1805本×147円=26万5335円。ぜいたくだ。
KENJI
当店など、被災した内湾地区の国登録文化財は次の団体・企業のご支援で応急修理が進められています。世界各地からのご支援に深く感謝申し上げます。
文化財保護・芸術研究助成財団
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気仙沼風待ち通信 2013年2月号(PDF) |
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