ジャケ買いです
重松清著『希望ヶ丘の人びと』(小学館)の装丁を奥原しんこ画伯が手がけたそうな。週刊ポスト連載時も挿絵を担当していて、行間から浮かぶ風景を楽しみにしていた。その集大成ともいうべき装丁がこれ。うれしいでないの!このブログをご覧の方なら、どこがモチーフかピンとくる人も多いと思う。この風景に懐かしさを覚える人はぜひ書店へ。1月15日発売。
KENJI
丸ノ内線に乗っていたら池上永一『テンペスト』の中吊り発見。筒井康隆、井上ひさし、森村誠一、なんかすごい人たちの読後感想が書かれている。スシ王子の堤幸彦監督のもあった。うひゃあ!広告だからそりゃ絶賛ばかりだけど、こんなに集まるものでもないだろう。正確に数えていないけれど30人はあったと思う。野性時代の連載ですごい小説だなと思っていたら案の定、やっぱりそうなんですか。「ページをめくる手が止まらない」だって。分かる分かる。
内容をかいつまむと、時は19世紀。琉球王国末期の王朝を描いた物語。向学心に燃える少女が役人になって流刑になって側室になって母になって国が滅ぶ。って端折りすぎ!!まぁ、どこから説明し始めたら良いのか分からないくらい要素が詰まっているわけで、欧米列強との知恵比べやら女たちの意地悪合戦やら友情やら恋愛やら、どの切り口からでも読みごたえがあるから手に負えない。それに脇役が魅力的で感情移入してしまう。遊女に堕とされた王族、変態宦官、お上品爆弾を投下する側室、策謀に長けた女官見習い。きっつぅー、と思いつつも次の展開に息をのむ。
その中で僕は「国家とはなにか」を考えさせられた。これを読むまで琉球が沖縄県になった程度の認識しかなく、はるか遠くの歴史だと思っていた。それが同じ日本にあって国家を解体させられた地域もあるんだなと。しかも近代に。考えてみれば東北だって1200年前、アテルイ率いる蝦夷軍が坂上田村麻呂に滅ぼされたわけで、国家形態ではなかったにせよ支配された歴史をもつ。近世近代でいえば奥州仕置も奥羽越列藩同盟の瓦解も味わった。争いがあっても、国が滅ぼされても大地は残り、人は生き続ける。国家はその枠組みでしかない。そんな風に思った。
KENJI
今年5月まで野性時代に連載された池上永一著『テンペスト』。琉球王朝の最期を描いた作品で、琉球史を縦軸、池上テイストたっぷりの濃いキャラを横軸にして、まさに縦横無尽といったところ。次の連載が待ち遠しくて定期購読したのなんて何年ぶりだろう。その連載が来月単行本になる。上下巻あわせて1800枚の長編。でも次から次へと見せ場があって、ヤマ場があって。飽きないどころか、夜通し読んでしまうに違いない。ネタバレになるので内容は伏せておくとして、読了後の気分は厚切りステーキ完食後の満足感と同じ、いや中華フルコースか、いや何だろう。食べたことないけれど、琉球の宮廷料理を平らげた気分かな。ま、それだけ満腹度の高い作品だと思う。
話題の一冊になりそうな予感。
池上永一 テンペスト特設サイト
KENJI
当店など、被災した内湾地区の国登録文化財は次の団体・企業のご支援で応急修理が進められています。世界各地からのご支援に深く感謝申し上げます。
文化財保護・芸術研究助成財団
|
---|
気仙沼風待ち通信 2013年2月号(PDF) |
最近のコメント