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2007-10-10

豊かな食は

Perrochon_lunch
 

 昼食も長かった。いま料理してると聞いて1時間半。フレデリックの奥さんがシーツを干し始めたと思ったらテーブルクロスだった。毎昼こうなのか聞いたら、天気の良い日はテラスで食事するという。ミラネーゼリゾットにトマトときゅうりのサラダ、豚肉のオーブン焼き。ワインを飲みながらまたも会話が止まらない。何を話しているか分からないけど楽しい。しかもデザートとエスプレッソまでついてきた。2時半に始まった食事が終わったのは4時。長っ。

 そして今晩は友人宅でパーティーがあるという。どうも友人の子息が洗礼を受けたか何かでお祝いがあるらしく、僕も参加させてもらった。

 麓の友人宅には既に30人以上集まっていた。子供から大人まで、なんとまあひっきりなしにやってくること。とりあえず「チャオ(やあ)」「ビーノ(ワイン)」「グラツィエ(ありがとう)」の3語でなんとかなった。片隅に固められたテーブルには、さんま20尾は入るトレーがずらりと並び、そこには数種のラザニアやティラミスがどーんと。やれ食えそれ食えと親戚のおばちゃんみたいに次から次へとすすめられる。おばちゃんの勧めたがりは万国共通だと思った。隣では僕と同じ年頃の男性が婆さんにウィンクしたら、婆さんも皺を目一杯寄せたウィンクでこたえていた。その風景に吹き出してしまったら、婆さんは僕に話しかけてきた。通訳すると「私には7人の子供がいるの。その一人よ。」ということだった。なんだ、そうなのか。ここに集まっているほとんどは家族なのか。親子でウィンクし合うなんて僕にはできない。

 ペロションさん宅にしても、友人宅にしても、食が豊かというより人間性が豊かだ。どちらが欠けてもだめなんだろうなと思った。

 豊かな食は人にあり。
 スローな食は家族にあり。
 ふるさとにうまい酒あり(男山)。

KENJI

2007-10-09

なにもしない贅沢

Perrochon_terrace

 クリスチャンヌ・ペロションさんの家は丘の頂にある。10世紀には城というか要塞だったところにアトリエ兼自宅をつくった。それだけに眺めがいい。テラスから見える山なみに、浮かんでは消える雲をずっと眺めていたら、キヨエおっぴい(1900−1993)を思い出した。

 キヨエおっぴいは晩年、店の2階から魚町一丁目商店街をずっと眺めていた。来る日も来る日もそればかり。10年近く毎日そればかりだったように記憶している。幼かった僕は幽閉された大奥に見えて可哀想だと思ったし、人と車の往来だけ見て何が面白いのだろうと思っていた。あの店に人が入っただの、今日は車が多いだの、だからといってどうこうしようというわけでもなく、ただ眺めるだけ。

 トスカーナの山を見て、おっぴいの気持ちが何となくわかった。楽しみは外にあるのではなく、自らの内側にあるものなのだと。まあ、わざわざイタリアくんだりまで来て気づくことでもないのだけれど、流れゆく雲を見てそんな風に思った。なにもしない贅沢。そこにある楽しみ。そこまで達観するにはあと何年かかるだろう。

KENJI

2007-10-07

ぼっぽらぼーっとスローフード

Perrochon_breakfast

 フィレンツェから急行で40分、そこから車で20分、さらに未舗装の山道を3km、クリスチャンヌ・ペロションさんのお宅にお邪魔させていただいている。ペロションさんの家はアグリツーリズモとして一部屋を貸し出していて、日本でいうグリーンツーリズム、民泊といったところだ。トスカーナらしい赤瓦で石造りの小部屋を借り、ペロションさんの家族と食事を共にしている。

 夕方、息子のフレデリックが夕飯を支度するという。待つこと三時間。待ちくたびれて僕は寝てしまった。ペロションさん、夫、息子夫婦と孫たち、娘、アシスタント夫妻と娘、僕を含めて11人での食事。それに犬3匹と猫3匹。トスカーナの山中とは思えない賑やかな食卓だった。みなイタリア語なので何を話しているか分からない。ペロションさんの旦那が英語で通訳してくれる。ジーンズの穴はアリかナシかで30分話していると思ったら、結婚式の風習の違いを話している。日本と同じようにイタリア国内でも違うらしく、ナポリはどうだ、ベネチアはどうだ、東ヨーロッパだともっと違う、みたいなことを話していたらしい。準備に3時間、食事に30分、食後の会話に1時間。合計4時間半。それぞれ散った後も会話が続いている。

 スローフードの本場で感じたのは、それが日常であって何もおしなべてアピールすることでもないんだなと。スローフード運動が提唱する地産地消や手作りは縁辺であって、本質ではない。キャンティ地方だもの、そりゃキャンティ産のワインを飲む。近くに牛がいるから仔牛をオーブンで焼く。ロハスやマクロビオティックのように、何が何でも有機野菜をということでもない。スローフードの本質はそこにあるものを楽しむことだと思った。それに食卓を囲んでする素朴で他愛もない会話。僕にはイタリア語が気仙沼弁のボッポラボーットとしか聞こえなかったけど。

KENJI

花の都に着く

Firenze
 地球を三分の二周してやっと着きましたフィレンツェ。思っていたより暑いです。何か書こうと思っていましたが乗り物に疲れてしまいました。近いうち書きます。

KENJI

2007-10-06

世界やきもの紀行

Nrt_nwarounge

 今日から2週間、イタリアとアメリカへ行ってきます。イタリアはトスカーナ地方に住む陶芸家クリスチャンヌ・ペロションさんの窯を訪ねて、アメリカはペンシルバニアのウィリーさんの窯焚きの助っ人というか丁稚というか。成田から直行便で飛べばいいものを、ユーロ高でヨーロッパ線はバカ高。北米発のヨーロッパ線は日本発の半額近いので、北米から向かうことにしました。飛行機と鉄道を乗り継いで、目的地まで約28時間。やっぱ割高でも直行便にすれば良かったかも。

 ニュヨーク経由でミラノへ、ミラノから特急でフィレンツェへ、そこからまた各駅停車に乗り換えて最寄の駅へ。訪ねたことのある人に聞いたら、家に着くにはあぜ道みたいな獣道を通っていくのだとか。

 それでは行ってきます。

KENJI

河原田ライブカメラ

BBっといー東北