フィレンツェから急行で40分、そこから車で20分、さらに未舗装の山道を3km、クリスチャンヌ・ペロションさんのお宅にお邪魔させていただいている。ペロションさんの家はアグリツーリズモとして一部屋を貸し出していて、日本でいうグリーンツーリズム、民泊といったところだ。トスカーナらしい赤瓦で石造りの小部屋を借り、ペロションさんの家族と食事を共にしている。
夕方、息子のフレデリックが夕飯を支度するという。待つこと三時間。待ちくたびれて僕は寝てしまった。ペロションさん、夫、息子夫婦と孫たち、娘、アシスタント夫妻と娘、僕を含めて11人での食事。それに犬3匹と猫3匹。トスカーナの山中とは思えない賑やかな食卓だった。みなイタリア語なので何を話しているか分からない。ペロションさんの旦那が英語で通訳してくれる。ジーンズの穴はアリかナシかで30分話していると思ったら、結婚式の風習の違いを話している。日本と同じようにイタリア国内でも違うらしく、ナポリはどうだ、ベネチアはどうだ、東ヨーロッパだともっと違う、みたいなことを話していたらしい。準備に3時間、食事に30分、食後の会話に1時間。合計4時間半。それぞれ散った後も会話が続いている。
スローフードの本場で感じたのは、それが日常であって何もおしなべてアピールすることでもないんだなと。スローフード運動が提唱する地産地消や手作りは縁辺であって、本質ではない。キャンティ地方だもの、そりゃキャンティ産のワインを飲む。近くに牛がいるから仔牛をオーブンで焼く。ロハスやマクロビオティックのように、何が何でも有機野菜をということでもない。スローフードの本質はそこにあるものを楽しむことだと思った。それに食卓を囲んでする素朴で他愛もない会話。僕にはイタリア語が気仙沼弁のボッポラボーットとしか聞こえなかったけど。
KENJI
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