気仙沼弁の「だれ!」の使い方を考えてみた。標準語でいう接続詞の「だって」だが、そんな使い方は聞いたことがなく、抑揚で意味が若干異なることに気づいた。
「おらいの息子、あんだいで使ってけんねべが」(うちの子を御社で雇ってくださいませんか)
と言われたとしよう。すると考えられるだれは3つある。
「だれ!」「だーれー!」「だれだれだれだれー!」
「だれ!」は最初から断るつもりで、はなから否定する即答だれ。次に出る言葉は「景気わるくて(雇えない)」だろう。極めて短く、スタッカートを聞かせて「だ」を強調する。
次の「だーれー!」は否定なのか肯定なのか分からない困惑だれ。こちらは流暢かつ「れ」を強調して発音する。何度も拝み倒されているとか、対象年齢に達していないとか、困惑しつつも否定しているようでしていない、でも何となくニュアンスが伝わる、といったところだ。
「だれだれだれだれー!」は次の言葉がみつからず、とりあえず発する連発だれ。顎を上げながら地声を半音あげて発すると言いやすい。「やぃやぃやぃやぃやぃ」ではへりくだり過ぎ、「ばばばばば」では驚きすぎ、その中間が連発だれだろう。感情を込めつつも、同じ目線で次の言葉を探しているのが垣間見える。たぶん「おらいみでなどごではもったいねでば」とか「あんな優秀な息子さんおらいで使うなんて」と相手を気遣いながらやんわり断ることだろう。また、ドアに裾が挟まったまま発車した時やおひたしに醤油をかけすぎた時に目撃者が発する。そのことから考えても、場つなぎの意味合いが強い。
このように、相手を飽きさせないほど連発したり、相手の受け取り方で判断できるよう配慮したり、サービス精神をまぶしているのが「だれ!」なのだろう。
KENJI
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